AD Science Inc.

グロー放電

Quorum Technologies社(クォーラムテクノロジーズ)

 GloQube Plusは、グロー放電(プラズマ処理)により、TEMカーボン支持膜とグリッドの親水化をはじめ、 表面状態の親水化、正・負電荷の付与を行う、コンパクトで使いやすい表面改質装置です。表面状態の改 質により、ポリマー結合を強めることも可能です。
 GloQube Plusは二つの独立したチャンバーを搭載しています。クリーンチャンバー(大気用)は疎水性から親水性への変換を必要とするアプリケーションのために 設計されており、プロセスガスとして大気を利用します。ベイパーチャンバー(薬品蒸気用)は親水性から疎水性への変換を必要とするアプリケーションのために 設計されています。プロセスガスにはメタノールやアルキルアミンを使用します。


主な特徴

  • 短いサイクルタイム
  • 全自動で短い処理時間
  • 素早く簡単な試料の取付
  • 独立した二つのチャンバー
  • タッチスクリーンでの直観的な操作
  • 安全な試薬蒸気供給
  • チャンバー間相互汚染を防ぐ機能
  • 高速または低速ベントコントロール

装置概要

GloQubeの説明のための画像
  •  a :親水化(大気)・疎水化(薬品蒸気)チャンバー
  •  b :タッチスクリーンで簡単操作
  •  c :安全な試薬の取扱
  •  d :簡単な試料設置

a: 親水化・疎水化2つのチャンバー

 GloQube Plusは2つの独立したチャンバーを搭載しています。これにより、1台で「親水化」と「疎水化」両方の処理を行うことができます。 クリーンチャンバーは疎水性から親水性への変換を必要とするアプリケーションのために設計されており、プロセスガスとして大気を利用します。 ベイパー(蒸気)チャンバーは親水性から疎水性への変換を必要とするアプリケーションのために設計されています。プロセスガスにはメタノールや アルキルアミンを使用します。

大気用・蒸気用チャンバー

b: タッチスクリーンで簡単操作

 直感的に操作できるタッチスクリーンで、誰でも素早い入力が可能です。お好みの設定条件を保存した「レシピ」や、あらかじめ登録されている デフォルトプロトコルを選んでプロセスを実行できます。また、USB インターフェースにより、ソフトウェアの簡単なアップデートと、レシピファイル のUSBメモリへのバックアップ/ コピーが可能です。ログファイルをExcelなどでの解析用にcsv 形式でエクスポートすることもできます。

GloQube Screen

c: 安全な試薬の取扱

 試薬容器には密封セプタムバイアルを採用することで、オペレーターの安全面を考慮しています。試薬容器はバヨネット方式のバイアルホルダーですので、 試薬の取付け・取外しを簡単で確実に行うことができます。

GloQubePlus Vial瓶取付

d: 簡単な試料の設置

 各チャンバーは25mm×75mmの顕微鏡用スライドガラスを2枚収容できます。試料は引き出し型のチャンバードアと試料ステージを使用して、 簡単に取付けできます。ステージは高さ調整が可能で、装着されているスライドガラスホルダーは取外しできます。さらにステージは完全に 取外しできるので、チャンバークリーニングを容易に行うことができます。

GloQubePlus チャンバー開

グロー放電

DCマグネトロンを用いたグロー放電。カソード(ヘッド)近傍での電子閉じ込め、正イオンのカソード方向輸送、試料直上のシース形成、ラジカルによる表面改質の流れを示す模式図。
DCマグネトロン・グロー放電の模式図
  • DCマグネトロンを用いたグロー放電による表面改質
  • ヘッド(ターゲット)をカソード(−)として磁場で電子を閉じ込め、低圧ガス中に安定なグロー放電を発生。 生成したラジカル/励起種が試料表面で有機汚染のアッシングと極性官能基付与を行います。

  • 表面改質の流れ
    • 電子の閉じ込め
    • ヘッド直下の磁場で電子を閉じ込める

    • 電離・励起
    • 加速電子がガス種(Ar、O2、N2など)と 衝突し、電離(Ar+、O2+、N2+)と 励起(Ar*、O*、N*)・ラジカル生成(O、OH、N)が進行

    • イオンの行先
    • 生成した正イオンは主にカソード(ヘッド)へ引かれて 衝突(スパッタ起点)。チャンバー側はアノード(GND)。

    • 試料側のシース
    • 試料直上に薄い陽極側シースが形成され、電子は入りにくく 低エネルギーの正イオンのみ到達。

    • 改質
    • 試料表面には中性ラジカル/励起種、VUV/UVが届き、アッシングと 極性基(–OH/–C=O/–COOH/–NH2など)の導入を促進。濡れ性・接着性を 改善。

グロー放電処理による効果

グロー放電(プラズマ)処理による効果
表面状態電荷雰囲気主なアプリケーション
親水性エアーカーボンコートされたTEMグリッド
親水性エアー※核酸のカーボンフィルムへの接着
疎水性メタノール正の電荷をもつタンパク質(例:フェリチン、シトクロムC)
疎水性アルキルアミンタンパク質、抗体および核酸
※エアーでのグロー放電処理を行った後に、ユーザーによる酢酸マグネシウムでの後処理が必要です。

親水性・負電荷

 プロセスガスとして大気を利用するプラズマ処理をすることで、疎水性になる傾向のあるカーボンフィルムを、 GloQubeのイオンボンバードにより親水化します。吸着した不純物と電子の付着を除去することによって表面状態を親水性にし、 負に帯電した表面を作り出します。

親水性・正電荷

 上記の親水化プラズマ処理をした後に、酢酸マグネシウム溶液による処理を行うことで表面の負電荷を溶液からのMg²+イオンによって中和し、 親水性で正に帯電した表面を作り出します。核酸をカーボンフィルムへ接着する際などに適しています。

疎水性・負電荷

 炭化水素の還元雰囲気中(通常はメタノール)でプラズマ処理されたカーボンフィルムの表面は疎水性で負に帯電した状態になります。 フェリチンやシトクロムCといった正の電荷をもつ高分子のタンパク質ファミリーを強く吸着します。

疎水性・正電荷

 アルキルアミン蒸気中でプラズマ処理されたカーボンフィルムは、疎水性で正に帯電します。核酸や、グルタルアルデヒド固定された タンパク質といった、負に帯電した高分子を観察する際に適しています。

アプリケーション

事例:TEMグリッド前処理

  • 保持・配向・染色

    タンパク質など生体高分子のTEM観察では、グリッド表面の濡れ性や表面電荷のわずかな差が、試料の保持率・配向・染色ムラに直結します。 非処理グリッドでは、微量の吸着物(例:水分・低分子)や帯電不均一により、凝集・偏在・配向の偏りが発生しやすいです。

    グロー放電(空気プラズマまたは化学蒸気プラズマ)を用いて、カーボン支持膜(数nm)の濡れ性・表面電荷・官能基を用途に 合わせて制御できます。

  • 代表的な前処理条件と狙い
    • 空気プラズマ:親水化・負電荷化

      吸着物除去と均一親水化で、試料の広がりや保持を安定化。ネガティブ染色のムラ低減に有効。

    • アルコール蒸気(例:メタノール):やや疎水・負電荷

      金属コアを持つタンパク質などで、コア内イオンの流出を抑えたコントラスト維持に有効。

    • アルキルアミン蒸気(アミルアミン):疎水・正電荷

      負帯電部位を持つ粒子の吸着・配向を制御し、特定ビューの出現比率を高めやすい(配向バイアス付与)。

  • 得られる効果
    • 試料保持率の向上

      低濃度試料でも視野内に十分な粒子数を確保

    • 配向制御

      目的ビュー(例:側面/上面)の出現率を調整し、構造解析の効率向上

    • 染色・凍結の安定化

      ネガティブ染色の均一化、cryo-TEMでの氷膜・コントラストの再現性向上

  • 適用分野の例
    • 単粒子解析(タンパク質・核酸・複合体)
    • 金属含有タンパク質、ナノ粒子テンプレーティング
    • 材料科学試料の表面清浄化・濡れ性最適化

論文

微生物・分子生物学